ショットブラスト機を検討する上では、「複雑な形状の部品をムラなく処理したい」「製品同士が衝突することによる打痕を防ぎたい」といった悩みを持っている方もいるのではないでしょうか。こちらの記事では、ハンガー式ショットブラストを取り上げて解説。基本構造から他の方式との違いに加えて、選定基準やランニングコスト、リスクといった点まで網羅的にまとめています。自社に合ったショットブラスト機を選定し、品質向上と効率化の実現に繋げてください。
ここでは、「ハンガー式ショットブラスト」の基本構造と仕組みを紹介します。タンブラー式やテーブル式といった他の方法との違いもまとめました。
ショットブラストとは、インペラ(羽根車)を高速回転させた遠心力により研磨剤を投射することによって、金属表面の錆おとしや下地の処理を行う加工法をいいます。その中のひとつである「ハンガー式」とは、回転フックに製品を吊り下げた状態でブラスト室に搬入し、自動連続式に回転させながら加工を行う方法です。
ハンガー式の場合には、製品全体にあらゆる角度から研磨剤を当てられることから、ムラのない均一な仕上がりが得られます。また一回の処理で全面の加工が完了できるため、作業効率が高い点が特徴です。
ハンガー式と、他の方法(タンブラー式やテーブル式)にはさまざまな違いがあります。
タンブラー式ではドラム内で製品の攪拌を行うことから、製品同士が衝突してしまい、打痕や傷がついてしまうリスクがあります。また、テーブル式の場合には製品を台に置いて処理を行うため片面ずつの処理となり、全面の処理を行うには反転させて作業を行う手間が発生します。
ハンガー式の場合には空中に吊るして処理を行うため、接触による打痕を防ぐことができ、自動連続的に回転させることによって製品を反転させる作業も不要です。
ハンガー式ショットブラストの導入によって期待できる、現場の課題解決につながる3つのメリットをご紹介します。
製品を吊り下げて加工を行うことから、製品同士の衝突による打痕がつかないため、傷・打痕が許されない精密部品や変形・割れのリスクが考えられる製品にも対応可能です。さらに、自転させつつさまざまな方向から投射材を当てて加工を行うことから、複雑な形状の製品でも死角ができにくく、全体をムラなく仕上げられます。
ハンガー式の場合、ハンガーに製品を掛けてセットを行います。そのため、手作業では扱いにくい中〜大型の部品や重量物の処理に向いています。ホイストを使用してハンガーに吊り下げる、といった方法にも対応できますので、作業者の負担を減らしつつ搬入出を行うことが可能です。また、作業の途中で重量物を裏返すといった作業も不要で現場の安全性向上につながる点も、大きな部品や製品の加工を行うのに向いているといえます。
ハンガー式のショットブラスト機は、オーバーヘッドコンベアなどの搬送設備と連動させることにより、自動化ラインに組み込めます。自動化ラインの構築によって、リードタイムの短縮や大幅な人件費の削減も期待できます。
実際にハンガー式のショットブラスト機を選定する際、比較すべきポイントとしては以下のような点を押さえておくことが大切です。
導入にあたっては、処理を行いたいワークの最大寸法と重量を正確に把握し、ハンガーの耐荷重とブラスト室の有効寸法を確認した上で機種の選定を行います。もしギリギリのサイズを選んでしまった場合には、投射時の揺れで製品が壁面に接触する可能性がありますので注意が必要です。
また将来的に製品が大型化する可能性も考慮し、余裕を持ったサイジングを行うことによって、失敗を防ぎ長期的な活用が可能となります。
ワークの形状に合わせ、投射装置(インぺラ)が適切な位置や角度に配置されているかを確認することがポイントです。ワークに対し死角なく投射できる配置であれば、処理時間の最適化が可能であるといえます。
また、加工時には大量の粉塵が発生するため、粉塵対策として集塵機の性能を確認しておくことや、フィルターの交換頻度、清掃のしやすさなど、集塵性能と日々の運用におけるメンテナンス性(保全性)を確認しておくことも重要です。
実際に導入を検討するにあたっては、導入時のリスクや懸念点、コストに関する点もあらかじめ検討しておくことが必要となります。
ハンガー式のショットブラスト機を導入する場合には高額な初期費用が発生します。しかし、これを単にコストとして捉えるのではなく、総合的な費用対効果で計算することがポイントです。
導入による処理時間の短縮や、歩留りの改善による利益の創出、人件費の削減効果などを考慮して、総合的にコストを計算します。将来的な利益の創出も含めてシミュレーションを行ってください。
ブラスト機を運用する場合、インペラのブレードや庫内の保護ライナーといったように、摩耗部品を定期的に交換することが必要です。この点から、これらの交換頻度やランニングコストをあらかじめ確認しておきます。
また設置環境に関しても、天井高の確保や振動に耐えるための基礎工事が必要になるケースもありますし、稼働時の騒音や粉塵漏れへの対策も不可欠といえます。このように、設置においてどのような対応が必要なのか、既存の向上レイアウトへの影響を事前に明らかにしておくことが求められます。
ショットブラスト機を導入する場合には、自社が抱えている「解決したい課題」を明らかにしてメーカーを選定することが必要となります。
「処理能力を上げたい」「打痕をゼロにしたい」「メンテナンスの手間を減らしたい」といったように、現場が持つさまざまなニーズを満たすスペックを持つ機種の選定はもちろん、導入後のメンテナンスや必要な部品供給が迅速に行われるかなどを確認し、自社に合ったパートナーとなるメーカーを見極め、機器の導入を行ってください。
ハンガー式のショットブラスト機は、製品を吊るして処理を行うことから打痕を防ぐ点や、複雑形状のワークを均一に仕上げられるといった特徴を持つ設備です。導入時には初期費用や摩耗部品のランニングコストと、生産性の向上など導入によって得られるメリットを比較しながら、ニーズに機種と信頼できるメーカーを選択することによって、自社のものづくりにおける競争力の強化に繋げられるといえます。
ショットブラスト機は、加工部品の素材や形状に適した装置を選ぶことで、処理速度の向上やコスト削減が可能。メーカーごとに得意とする部品のタイプが異なるため、加工する部品に応じた装置選びが欠かせません。ここでは、部品ごとにおすすめのショットブラスト機を扱うメーカーを紹介します。
太洋マシナリー
鋳造・鍛造・製缶・製鋼部品の附着砂や錆・スケール落しを目的とし、ワークの形状・材質・処理能力に対応したショットブラスト装置をカスタム対応。
標準機械も取り揃えており、用途に応じたレイアウトとオプション仕様でセミカスタム設計しています。
高性能セパレーターと最適なライニング材で不純物を除去し、鋳造・鍛造・製缶・製鋼部品の製品表面仕上がり状態を改善し、消耗部品の延命が期待できます。
用途に合わせて消耗部品やキャビネットライニングの材質と取付方法を選定し、メンテナンスを簡素化します。
不二製作所
1μm以下の超微粒子研磨材を安定して噴射できる装置に、独自の研磨材定量制御技術を搭載することで、低圧での安定噴射を実現。
繊細な製品加工の再加工や検査負担を軽減します。
精密加工向けに多関節ロボット自動化を搭載したショットブラスト機を提供。
クリーンルーム環境での運用にも配慮し、処理精度と清浄性の両立をサポートします。精密生産ラインにも組み込みやすい設計です。
Wheelabrator
(ホイール・アブレーター)
航空機メーカーと共同開発し、航空部品に特化した装置を提供。
処理条件や稼働状態をリアルタイムで記録・管理できるトレーサビリティ機能により、航空機・宇宙開発業界の厳格な品質要求に応えます。
疲労強度の向上や応力腐食割れの抑制など、航空機部品で重視される性能改善に特化したショットピーニング装置を開発。
CNC制御や多軸ロボットによる精密な噴射制御で、均一なピーニング処理を実現します。