ショットブラストの導入や運用では、投射量の調整不足による処理ムラや騒音など、さまざまな課題が発生します。本ページでは、こうした課題とその解決策を解説し、生産性の向上やコスト削減につながるヒントをまとめました。
鋳造品や造船・建設機械向けの重厚長大ワークでは、表面積が広くミルスケールも厚いため、一般的な投射量では十分な処理ができず、生産効率が落ちるという課題があります。また、複数台のショットブラスト機を使うにはスペースやコスト面の制約もあります。
高出力のタービンを搭載したショットブラスト機の導入が効果的です。投射量をワークの種類や処理状況に応じて調整できるモデルを選ぶことで、適切な処理条件を維持しながら、作業時間の短縮と均一な仕上がりを両立できます。
ただし、高出力のショットブラスト機は処理能力を向上させる一方で、設置スペースや電源要件が変わる場合があります。導入前には、既存設備との整合性や安全管理上の条件も確認しましょう。
パイプ、筐体、複雑形状の鋳物部品などは、凹凸や奥まった部分にメディアが当たりにくく、処理ムラが起きる原因になります。処理ムラは外観品質のばらつきや、後工程での不具合につながるリスクがあります。
複雑な形状のワークには、多軸制御のノズルを搭載したショットブラスト機や、ワークを自動回転させる治具を備えたタイプのショットブラスト機が有効です。
ショットブラスト機側に自動制御機能(PLC連携)があると、ワークごとに適切な動作パターンを記憶・再現でき、品質の安定化に貢献しました。
ショットブラスト処理により、素材表面の酸化被膜が完全に除去されると、基材の鉄がむき出しになります。この状態は、水分や酸素と反応しやすく、短時間で錆びが進行する場合があります。
処理直後に防錆剤を塗布する、脱脂洗浄・乾燥装置と組み合わせるなどの工程が、錆び防止の解決策として有効です。
例えば、塗装前工程の金属部品には水溶性防錆剤が適し、倉庫保管が長期化する場合には油性系や気化性防錆紙との併用が適しています。ワークによっては、酸化防止ガスなどの活用も選択肢になります。
メディアは、ワークやショットブラスト機内で何度も衝突することで摩耗します。特に、ワークに対して硬すぎるメディアを選んだり、靭性が低く割れやすいメディアを使用したりすると、摩耗・破砕が早くなり、頻繁な交換が必要となってコスト増につながります。
また、過度な投射速度や角度の設定もメディアに負荷をかけ、頻繁な交換が必要になりコスト増につながります。
摩耗対策には、メディアの再生装置(メディアのサイズを選別し、不要な粉塵を取り除く機能)を備えたショットブラスト機の導入が有効です。使えるメディアを再利用しつつ、消耗品コストを削減できます。
用途に応じて耐摩耗性の高いセラミックショットなどへ切り替えることも、ランニングコストの抑制につながります。
ショットブラストでは、ワークやメディアの微細な破片が粉塵として発生します。特にアルミニウムやマグネシウムなど軽金属の粉塵は、集塵機で十分に処理されずに滞留すると危険です。
静電気の放電や設備の火花が引き金となり、出火・粉塵爆発を引き起こす重大なリスクがあるためです。
粉塵爆発のリスクを低減するには、粉塵の堆積を防ぐ集塵・排気システムの適正化が不可欠です。
ろ過風速が適切に管理でき、導電性のHEPAフィルター(空気中の微粒子を捕集する高性能なフィルター)を備えた集塵機を導入することで、静電気による着火源を抑えられます。また、粉塵を水で封じ込める湿式集塵機の導入も有効な対策です。
ショットブラスト工程では、メディアがワークに高速で衝突する際に大きな騒音が発生します。騒音が大きいと、作業員の集中力低下や、周囲との声が聞き取りにくくなることによるコミュニケーションの阻害など、作業に支障をきたすケースがあります。
音の大きさ次第では法的な騒音規制(作業場内85dB以下など)に抵触する可能性もあるため、夜間稼働や屋外設置時は特に注意が必要です。
ショットブラスト機の筐体内部の防音材設計を施したモデルや、メディア投射の衝撃音を抑える特殊設計のタービンを搭載した静音型の機種を選ぶことが有効です。
他にも、防音パネルで囲むブース化や、騒音監視センサーを設置することで、安全かつ法令遵守の運用が可能になります。
ショットブラストにおける課題は、ワークの材質・形状・生産数・周辺環境などにより多岐にわたります。そのため、「すべての用途に万能なショットブラスト機」は存在しません。
重要なのは、自社で扱うワークや作業課題に適した機能を持つショットブラスト機を選ぶこと。導入前には、現場ヒアリングや処理テストを通じて、適切な処理方式・メディア・周辺装置の組み合わせを検討しましょう。
ショットブラスト機は、加工部品の素材や形状に適した装置を選ぶことで、処理速度の向上やコスト削減が可能。メーカーごとに得意とする部品のタイプが異なるため、加工する部品に応じた装置選びが欠かせません。ここでは、部品ごとにおすすめのショットブラスト機を扱うメーカーを紹介します。
太洋マシナリー
鋳造・鍛造・製缶・製鋼部品の附着砂や錆・スケール落しを目的とし、ワークの形状・材質・処理能力に対応したショットブラスト装置をカスタム対応。
標準機械も取り揃えており、用途に応じたレイアウトとオプション仕様でセミカスタム設計しています。
高性能セパレーターと最適なライニング材で不純物を除去し、鋳造・鍛造・製缶・製鋼部品の製品表面仕上がり状態を改善し、消耗部品の延命が期待できます。
用途に合わせて消耗部品やキャビネットライニングの材質と取付方法を選定し、メンテナンスを簡素化します。
不二製作所
1μm以下の超微粒子研磨材を安定して噴射できる装置に、独自の研磨材定量制御技術を搭載することで、低圧での安定噴射を実現。
繊細な製品加工の再加工や検査負担を軽減します。
精密加工向けに多関節ロボット自動化を搭載したショットブラスト機を提供。
クリーンルーム環境での運用にも配慮し、処理精度と清浄性の両立をサポートします。精密生産ラインにも組み込みやすい設計です。
Wheelabrator
(ホイール・アブレーター)
航空機メーカーと共同開発し、航空部品に特化した装置を提供。
処理条件や稼働状態をリアルタイムで記録・管理できるトレーサビリティ機能により、航空機・宇宙開発業界の厳格な品質要求に応えます。
疲労強度の向上や応力腐食割れの抑制など、航空機部品で重視される性能改善に特化したショットピーニング装置を開発。
CNC制御や多軸ロボットによる精密な噴射制御で、均一なピーニング処理を実現します。